母の介護で私が負担した月7万円の内訳
頼れる兄弟姉妹がいなかった現実
私には兄弟姉妹がいません。一人っ子です。つまり、母の介護に関する判断も費用負担も、すべて私一人にかかってきました。
充弟ががば、費用を分担したり、交代で対応したりできます。でも一人っ子にはそれができません。母のことは、全部自分でやるしかない。この隣さは、経験して初めて分かりません。
私が60歳のとき、母は亡くなる前の1年ほど入退院を繰り返していました。その入院にかかる費用として、私は月7万円ほどを負担していました。母自身の年金や貯蓄だけではまかないきれず、私が補填する形です。
当時の私は、自分の老後資金を準備しなければならない時期でした。手取り28万円の中から、母の介護費に月7万円。家計への影響は決して小さくありませんでした。
これが、親の介護費と自分の老後資金がぶつかるということです。母のために使うお金は、本来なら自分の老後のために積み立てるはずだったお金でもあるのです。
(せやかて、目の前で弱っていく母を前にしたら、お金のことなんか二の次になってまうんです。それでも、後から家計簿を見て青ざめる。そんな毎日でした。)
仕事への影響
母の入院はコロナ禍と重なり、面会は厳しく制限されていました。会えるのは週に1回程度。それでも、急に容態が悪化することが頻繁にあり、そのたびに仕事を休んで駆けつけました。
幸い、つきっきりの介護は必要ありませんでした。それでも突発的に休みを取ることが続くと、仕事への影響は避けられません。介護離職とまではいかなくても、「いつ呼び出されるか分からない」という緊張感の中で働き続けるのは、想像以上に消耗するものでした。
介護費用の全国平均データで見る「私だけではない」現実
自分の体験だけでは、それが平均的なのか、特別重いのかが分かりません。ここで公的なデータも見ておきましょう。
生命保険文化センターの調査によると、介護にかかる費用の平均は次の通りです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 初期費用(住宅改修・福祉用具など) | 約74万円 |
| 月々の介護費用 | 約8万3千円 |
| 介護期間の平均 | 約5年1ヶ月 |
| 介護費用の合計平均 | 約580万円 |
私の場合は約1年間で84万円でしたが、これでも家計への影響は決して小さくありませんでした。介護期間が長くなればなるほど、費用は膨らんでいきます。認知症や重度の介護が必要になれば、1000万円を超えることも珍しくありません。
介護が必要になるきっかけ
介護が必要になか主な原因も知っておくと、心構えができます。
| 原因 | 割合 |
|---|---|
| 認知症 | 約18% |
| 脳血管疾患(脳卒中など) | 約16% |
| 高齢による衰弱 | 約13% |
| 骨折・転倒 | 約13% |
| 関節疾患 | 約11% |
注目してほしいのは、脳卒中や骨折はある日突然起こるということです。私の母も体調の変化が気になり始めた頃から、あっという間に入退院を繰り返すようになりました。昨日まで元気だった人が、翌日から介護が必要になることがあります。だからこそ「その時になったら」では遅いのです。
施設に入る場合の費用相場
自宅での介護が難しくなった場合、施設への入居を検討することになります。
| 施設の種類 | 月額費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 5〜15万円 | 公的施設で費用が安いが入居待ちが長い |
| 介護老人保健施設 | 8〜15万円 | リハビリ目的、長期入居は難しい |
| 有料老人ホーム | 15〜40万円 | すぐ入居可能だが費用が高い |
| グループホーム | 15〜20万円 | 認知症の方向けの少人数施設 |
見落としがちな「保険外」費用
「介護保険があるから大丈夫」と思っている方も多いかもしれません。でも実際には、介護保険でカバーされる範囲には限界があります。
介護保険でカバーされるもの
- 訪問介護・訪問看護
- デイサービス・デイケア
- 特別養護老人ホームの入居費の一部
- 福祉用具のレンタル
- 住宅改修費用の一部(上限20万円)
介護保険でカバーされないもの
- 介護施設の食費・居住費
- 日用品・おむつ代
- 外出時の交通費
- 介護する家族の交通費
- 施設入居の初期費用
つまり介護保険はあくまでサポートであり、全額カバーしてくれるわけではありません。自己負担が必ず発生します。
特に印象に残っているのが「入院セット」です。入院時に半ば強引に勧められたこのサービスが、思いのほか高くつきました。
入院セットとは、パジャマ・タオル・歯ブラシなどの日用品を、病院が提携業者を通じて日額制で提供するサービスです。一見便利ですが、日額で課金されるため、入院が長引くと積み重なって大きな金額になります。自分で用意すれば数千円で済むものが、トータルで数万円になることも珍しくありません。
病気そのものの治療費以外にも、こうした「見えない費用」が次々と発生します。これが介護・入院費用の怖さだと、母の入退院を通じて実感しました。
また、私は母とは別々に暮らしていましたので、何か体調の変化があるたびに様子を見に行くことが日常になりました。仕事をしながらこれを続けるのは、体力的にも精神的にも想像以上の負担でした。別居介護には交通費などの直接的なコスト以外に、時間的・精神的なコストがかかります。これは数字には出てきませんが、確実に生活に影響します。
もし離れて暮らす親がいる方は、以下の点を早めに確認しておくことをおすすめします。
- 親の自宅周辺の地域包括支援センターの場所
- 訪問介護・見守りサービスの利用可能性
- 緊急時の連絡体制
- 近隣に頼れる人がいるかどうか
これらを把握しておくだけで、いざという時の対応が全然違います。
自分の医療費も忘れてはいけない
親の介護に気を取られがちですが、60代は自分自身の医療費リスクも同時に抱える年代です。
私自身、50歳で工場を廃業し自己破産した後、5年間ほぼ家にこもる生活を送っていました。運動はまったくせず、気づけば廃業前より10キロも太っていました。そんな不摂生がたたり、潰瘍性大腸炎で緊急入院を経験しています。
幸い10日ほどで退院できましたが、あのときの恐怖は忘れられません。この緊急入院が、私の健康への意識を根本から変えました。
日本には公的医療保険があり、医療費の自己負担は原則1〜3割です。70歳までは原則3割、70〜74歳は原則2割、75歳以上は原則1割(所得により異なる)となっています。さらに「高額療養費制度」があり、1ヶ月の医療費の自己負担には上限が設けられています。
注意すべきは、公的医療保険が効かない費用です。入院時の差額ベッド代、食事代の一部、先ほどの入院セットのような日用品、通院の交通費。これらは保険適用外で、自己負担になります。大きな病気そのものより、こうした周辺費用の積み重ねが家計を圧迫することが多いのです。
親の介護費と、自分の医療費。この両方が60代には同時にのしかかってくる可能性がある、ということを忘れないでください。
子どもに同じ負担をかけないために
母の介護を一人で担って、強く思ったことがあります。「自分が介護される側になったとき、子どもには同じ負担をかけたくない」ということです。
私には子どもが2人います。一人は独立し、もう一人は専門学校に通っています。この子たちに、私が母にしたような金銭的・時間的負担を背負わせたくない。それが今の私の、お金に向き合う大きな動機の一つです。
子どもに迷惑をかけないためには、自分の介護費用も含めた老後資金を、自分で用意しておくしかありません。年金の全額をNISAに投資しているのも、保険を見直して固定費を削減したのも、AI副業に挑戦しているのも、すべてはこの一点につながっています。「子どもに負担をかけず、自分のことは自分でまかなえるだけのお金を準備する」。母の介護が、その決意を固めさせてくれました。
今からできる備え
ダブルケアの負担を少しでも軽くするために、今からできることをお伝えします。
①親のお金の状況を早めに把握する
親が元気なうちに、年金額・貯蓄・加入している保険などを把握しておくことが重要です。いざ介護が始まってから慌てるより、事前に「親自身のお金でどこまでまかなえるか」を知っておくと、自分の負担の見通しが立ちます。
お金の話は親子でも切り出しにくいものですが、元気なうちに一度話しておくことを強くお勧めします。
②公的介護保険・制度をきちんと理解する
40歳以上の方は毎月介護保険料を払っています。要介護認定を受ければ自己負担1〜3割でサービスを利用できます。まずは地域の地域包括支援センターに無料で相談してみてください。
また、医療費が高額になった場合の高額療養費制度、介護と医療の自己負担を合算できる制度などもあります。使える制度を知っているかどうかで、負担は大きく変わります。
③介護費用として別枠で貯蓄する
老後の生活費とは別に、介護費用として最低300〜500万円を確保しておくことをおすすめします。私の経験から言うと、この備えがあるかないかで精神的な余裕が全然違います。
④自分の老後資金は親の介護と分けて守る
親の介護費と自分の老後資金は、できる限り分けて考えることが大切です。親の介護に引きずられて自分の老後資金�で使い果たすと、今度は自分が子どもに負担をかけることになります。
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まとめ|親も自分も守るために、今から備える
親の介護費と自分の老後資金が同時に襲ってくる。これは60代の多くが直面する、避けられない現実です。一人っ子で月7万円、1年で84万円を負担した私は、その重さを身をもって知りました。
全国平均で見ても、介護費用は約580万円。決して他人事ではない金額です。
大切なのは、親を大切にしながらも、自分の老後資金を守ることです。そしてその先には、「自分の子どもに同じ負担をかけない」という目標があります。
母の介護は、私にお金と真剣に向き合う覚悟を与えてくれました。同じようにダブルケアに直面している方、これから直面する方に伝えたいのは、早めの準備が自分も家族も守るということです。今できることから、一つずつ始めてください。


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