断捨離、というと「モノへの執着を手放す」「心を軽くする」といった精神的な話として語られることが多いですよね。でも、正直に言うと、私が断捨離をしたきっかけは、もっと現実的なものでした。
世の中の断捨離記事を読むと、思い出との向き合い方や、心の整理に重きを置いたものが多い印象があります。もちろんそれも大切なことですが、今日は少し違う角度からお話ししたいと思います。
事業を整理して、再起を図っていた時期です。手元にあったモノを見直して、売れるものは片っ端から売っていきました。感傷に浸る余裕なんて、正直あまりなかったんです。それより、モノが現金に変わっていく感覚のほうが、よっぽど気持ちよかった。
工具、在庫、使わなくなった機材。一つひとつ手放すたびに、頭の中も少しずつ整理されていくような感覚がありました。今日は、そんな実利重視の断捨離が、実は老後の住居費を下げることにもつながる、という話をしたいと思います。
60代の半数以上が「断捨離したい」と考えている
まず、世の中の関心の高さを見てみましょう。ある調査によれば、60歳以上の女性の半数以上が「積極的に断捨離をしたい」と考えているそうです。年齢を重ねるほど、モノとの向き合い方を見直したいという気持ちが強くなるのかもしれません。
テレビや雑誌でも「終活」や「生前整理」といった言葉を目にする機会が増え、社会全体の関心が高まっている印象があります。
専門家の見解では、体力・気力が十分にある60代のうちに取り組むのが望ましいとされています。
70代、80代になると、重い家具を動かしたり、細かい仕分けをしたりする作業自体が、だんだん難しくなっていくからです。「まだ元気なうち」というのは、思っている以上に短い期間なのかもしれません。
子どもの独立や定年退職といった、生活が大きく変わるタイミングは、モノを見直す絶好の機会だとも言われています。
モノを手放すと、住まいまで小さくできる
断捨離とダウンサイジング(住まいを小さくすること)は、実はセットの関係にあります。
広い家に住んでいると、使わない部屋にモノがたまりがちです。収納スペースがあるから、なんとなく残してしまう。これは、私にも心当たりがあります。空いている部屋を「いつか使うかもしれない」と物置代わりにしてしまうのは、多くの家庭に共通する現象だと思います。
逆に、モノを先に減らしておけば、コンパクトな住まいへの住み替えという選択肢が、現実的に見えてきます。「モノが多いから広い家が必要」なのか、「広い家があるからモノが増える」のか。実はどちらの側面もあり、モノを減らすことが、住まいを見直す最初の一歩になるのです。
順番としては、まずモノを整理し、それから住まいの選択肢を考える、という流れが無理なく進めやすいと感じています。急に住み替えを考えるより、身の回りを整えるところから始めるほうが、精神的にも取り組みやすいはずです。
住居費、実はここまで変わります
具体的な数字も見ておきましょう。100㎡を超える住宅の年間維持費は、60㎡台の住宅と比べて、約1.5倍になるというデータがあります。光熱費、固定資産税、火災保険料など、住まいが大きいほど、あらゆるコストが底上げされてしまうのです。
長年住み続けていると、こうした差はなかなか実感しにくいものですが、数字にしてみると意外に大きいことがわかります。
子どもが独立した後の家は、多くの場合、必要以上の広さになっています。使っていない部屋の分まで、税金や光熱費を払い続けているとしたら、それは見直す価値のあるコストです。ダウンサイジングによって、家賃や固定資産税だけでなく、掃除や管理の手間そのものも減らせます。
掃除する場所が減れば、体力的な負担が軽くなるのも、シニア世代にとっては見逃せないメリットです。
浮いたお金は、旅行や趣味、あるいは資産運用に回すこともできます。住まいを小さくすることは、単なる節約ではなく、これからの人生の選択肢を広げる行為でもあるのです。
先送りすると、将来の負担はもっと大きくなる
ここで、少し厳しい話もしておきます。もし今、モノの整理を先送りにすると、将来、家族が代わりに片付けることになります。「そのうちやろう」と思っているうちに、月日はあっという間に過ぎていくものです。
業者に依頼した場合の遺品整理の費用は、1Kほどの部屋でも3万円から10万円程度、広い住宅になると50万円以上かかることも珍しくありません。
しかも、これは金銭的な負担だけでなく、残された家族の時間的・精神的な負担にもなります。悲しみの中で、大量のモノと向き合う作業は、想像以上に体力も気力も消耗するものです。
元気なうちに少しずつ手をつけておけば、金額の面でも、家族の心理的な負担の面でも、大きな差が生まれます。これは、自分のためであると同時に、残される家族への思いやりでもあるのです。
自分で少しずつ整理しておけば、自治体の粗大ごみ回収や、価値のあるものは買取に出すといった方法で、コストを大きく抑えられます。
民間の不用品回収業者に一括で依頼するより、自分でできる範囲を先に減らしておくほうが、費用を抑えられる傾向にあります。この点は、以前の記事「実家の空き家、放置のコストと相続の判断」でお伝えした「早めに動くほど選択肢が残る」という考え方と、根っこは同じです。
無理なく始める、モノとの向き合い方
私自身の経験から言えるのは、一気にやろうとしないことです。事業整理のときも、全部を一度に片付けたわけではなく、少しずつ、目についたものから手をつけていきました。無理に一日で終わらせようとすると、途中で疲れて挫折してしまいます。
迷ったときの判断基準は、シンプルに「今の自分に必要かどうか」です。思い出の品まで無理に手放す必要はありません。そこは感情を大事にしていいところだと思います。ただ、それ以外のモノについては、「売れるものは売る」という視点を持つと、作業が驚くほど進みます。
捨てるだけだと、どうしても腰が重くなります。でも、「これはいくらになるやろ」と考えると、片付けが一種のゲームのようになる。私の場合は、この感覚が断捨離を続けるモチベーションになりました。
フリマアプリやリサイクルショップ、買取専門店など、今は売る手段も豊富にあります。捨てるという決断より、売るという決断のほうが、心理的なハードルが低いという方も多いのではないでしょうか。手間はかかりますが、その分の対価が現金として返ってくると思えば、続けやすくなります。
まとめ 断捨離は、老後資金づくりの一部でもあります
断捨離は、単なる片付けや精神的なデトックスにとどまりません。住居費というシニア世代にとって大きな固定費を見直すきっかけになり、将来の家族の負担を減らすことにもつながります。
事業の再起という経験を通して、私はモノを「持ち続けるコスト」と「手放して得られる価値」を天秤にかけることを覚えました。
そして、モノを売って現金に変えるという実利的な視点を持てば、断捨離そのものが、老後資金づくりの一部にもなります。感傷的になりすぎず、まずは目についたモノから、値段がつきそうなものを一つ、手放してみることから始めてみてください。
小さな一歩が、住まい全体の見直しにつながっていくはずです。今日、クローゼットや押し入れを一度開けてみることから、始めてみませんか。


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