「老後は賃貸と持ち家、どちらがいいのか」。これは60代が必ず直面する、答えのない問いです。
私は両方を経験しています。かつては賃貸で月8万5千円の家賃を払い、56歳で妻名義の中古住宅を購入して月6万円のローンに変わりました。賃貸も持ち家も、それぞれのリアルを知っています。
この記事では、両方を経験した62歳が、老後の住まい問題について正直にお伝えします。「賃貸か持ち家か」の正解は人によって違います。でも考え方の軸だけは、お伝えできます。
私が賃貸から持ち家に変わった理由
月8万5千円の家賃が重かった
56歳まで、私たち家族は賃貸暮らしでした。月8万5千円の家賃。収入が不安定だった時期も、この固定費だけは確実に出ていきました。
50歳で事業に失敗して一度すべてを失い、そこから這い上がってきた私にとって、毎月8万5千円が「消えていく」感覚は、じわじわと家計を圧迫するものでした。賃貸は身軽でいい反面、払い続けても何も手元に残らない。そのもどかしさは、ずっとありました。
妻の夢をかなえたかった
一番の理由は、妻の思いでした。長年の苦労をかけ続けた妻が、「もう一度自分たちの家に住みたい」と言っていた。その願いをかなえてやりたかった。それが、56歳で家を買う決断につながりました。
築20年の中古鉄骨3階建て。リフォームに400万円かけて、住宅ローンに組み込みました。月々の支払いは6万円。家賃より月2万5千円安くなりました。年間にすると30万円の差です。
持ち家に変わって分かったこと
良かったこと
住宅費が月6万円に下がったのは、家計への影響が大きかったです。浮いた月2万5千円が、他の備えに回せるようになりました。
それ以上に大きかったのは、妻の表情が変わったことです。「自分たちの家」という安心感は、数字に表れない価値があります。家族の精神的な安定という意味で、持ち家を選んで良かったと感じています。
気になること
持ち家には、賃貸にはない心配もあります。一番は修繕費です。築20年の中古住宅ですから、これからガタが来る部分が出てくるのは避けられません。外壁・屋根・水回り。まとまった費用が必要になる前に、少しずつ積み立てておく必要があります。
もう一つは、バリアフリーの問題です。我が家は3階建てで、寝室が1階・リビングと風呂が2階という間取りです。今は問題なくても、足腰が弱ってきたときに階段の上り下りがしんどくなる。持ち家を選ぶときに、将来の体の変化まで見越しておけばよかったと、少し後悔しています。
本当は賃貸の方が身軽かもしれない
正直なところを言います。両方を経験した今でも、「賃貸の方が身軽でよかったかもしれない」と思うことがあります。
賃貸なら、修繕費を心配する必要はありません。老朽化しても大家さんが直してくれる。バリアフリーが必要になったら、対応した物件に引っ越せばいい。生活の変化に合わせて、住まいを変える自由がある。
「賃貸は家賃を払い続けるだけで何も残らない」とよく言われますが、その代わりに身軽さと自由を買っているという見方もできます。どちらが正解かは、その人の状況や価値観によって変わります。
賃貸vs持ち家|60代が考えるべき視点
賃貸と持ち家のどちらが得かを、単純な金額だけで比べることはできません。60代が住まいを選ぶときに考えるべき視点をお伝えします。
視点①|老後の生活スタイルに合っているか
子どもが独立して夫婦2人になったなら、今の家は広すぎるかもしれません。広い家は固定費も維持費もかかります。生活に合った大きさの住まいに引っ越すことで、住居費を大幅に下げられることがあります。
60代でこれから住まいを変えるなら、「これからの生活に合わせて小さくて負担の少ない住まいに引っ越す」という発想も十分ありやと思います。持ち家にこだわらず、生活の実態に合った選択をすることが大切です。
視点②|持ち家なら修繕費を見込んでおく
持ち家を持つなら、修繕費は必ず家計に織り込んでおいてください。ローンを完済しても、維持費は続きます。外壁・屋根の塗装、水回りの交換、バリアフリー化のリフォーム。これらが老後に重なって来ることを想定して、今から少しずつ積み立てておく必要があります。
視点③|60代で新たにローンを組むのは慎重に
60代で新たに住宅ローンを組むことは、あまりお勧めできません。返済期間が短くなるため月々の支払いが重くなり、完済前に体が動かなくなるリスクもあります。もし購入するなら、できるだけ頭金を多く用意して、ローン期間を短くすることが重要です。
視点④|将来の体の変化を見越して選ぶ
住まいを選ぶときは、今の体だけでなく10年後・20年後の体を想像して選んでください。階段・段差・風呂やトイレの位置。元気なうちは気にならなくても、足腰が弱ったときに大きな差になります。バリアフリー対応の物件や、1階で生活が完結できる間取りを選ぶことが、将来の安心につながります。
まとめ|住まいの正解は「自分たちの生活」に合っているかどうか
賃貸か持ち家か、どちらが正解かは人によって違います。でも一つ言えることがあります。住まいの正解は「損得」だけで決めるものやない、ということです。
私が持ち家を選んだのは、妻の夢をかなえたかったからです。その決断に後悔はありません。でも老後の住まいを考えるなら、これからの生活に本当に合っているかどうかを、まず考えてほしい。
広すぎる家、維持費がかかりすぎる家、体に合わない間取りの家。これらは老後の生活を圧迫します。逆に、生活に合ったシンプルな住まいは、心にも家計にも余裕をもたらします。
住まいは、老後資金を守る大きな要素の一つです。今の住まいが本当に自分たちの老後に合っているか、一度じっくり考えてみてください。
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